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2009年8月 4日

【旅】散文的。見えないけれど、見えるもの

東京の空は、星が見えない。
美しい星々と、まん丸い月と、うっすらと陰る雲が、
我よ我よと重なり合う姿が見えない。

仕事が終わり、疲れて家に帰る毎夜、
空を見上げても星が見えないので、気が滅入るのである。

僕の故郷では、よく星が見えた。
そばの駐車場から、よく星を見上げた。
どこにいても、何をしていようとも、
空を見上げれば、そこには星があった。

春には、しし座が見えた。
夏には、はくちょう座とこと座とわし座で形作られた夏の大三角が見えた。
秋には、ペガスス座が見えた。
冬には、北斗七星やオリオン座が見えた。

思えばいつも、僕は星に見守られていた。

何万年も前に、暗く壮大な宇宙に散ったはずの星の光が、
今変わらぬ姿で地球のふちに見える。
宇宙における悠久の時間の流れと、
僕たち人間の80年足らずの人生の差異を感じると、
やはり人間とはちっぽけな存在だと思う。

子どもの頃、
寝る前などにおっきな宇宙のことを考えたりすると、
よく怖くなった。
あまりにも自分が小さすぎて。
それと当時流行った怪談話とが
頭の中でいっしょになって
とにかく怖くてトイレに行けなかった。
その頃僕の家はちっちゃな1階建ての家で、
隣には両親が寝ていたが、
それでも怖くてトイレに行けなかった。
よくガマンした。

しかし2階建ての家に建て替えて
1人で真っ暗な中寝るようになると
それが心地よくなった。
手に届く距離にある闇の中に
宇宙の深淵な闇が垣間見られる気がして
なんとなく楽しくなった。
茶色い犬にくるまって、その闇とたわむれた。
自分がちっぽけなことを感じるのが、楽しかった。

窓の外からは、
本物の闇の中から星が僕を見守っていた。

星降るちっちゃな街で、ちっちゃな僕は育った。

今、東京。
ほんの少しだけ大きくなった。
空に星は見えない。
よく故郷の星のことを考える。
夜の風に吹かれて。
まぶたの裏に焼き付いている星。
まだ、目を閉じれば残酷なほどくっきり見える。

死んだはずの星の光が、変わらぬ姿で
そこには見える。

見えるんだけど、見えないもの。
見えないけれど、見えるもの。
そこで、星々は輝き続けていた。

担当は、BUMBIでした。
次回更新はsujieさんです。

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投稿者 BUMBI : 2009年8月 4日 12:00